複合現実とはバーチャルリアリティの一種で、現実とCGとが合成された世界の体験を可能にする技術である。シースルータイプのヘッドマウントディスプレイ(HMD)の使用を前提とすることが多い。
HMDの多くは接眼面が小型のディスプレイである。当然、向こう側は透けて見えない。そこでHMDにビデオカメラを取り付け、そのカメラで撮影した映像を液晶ディスプレイに映すと、”透けて見える目隠し”のようなビデオシースルーHMDになる。ビデオカメラで撮った映像をいったんPCに取り込んでCGや字幕を合成してから液晶ディスプレイに表示することで、現実にはあり得ない世界を体験することができる。
等身大のヒューマノイドロボットに対して複合現実の技術を用いれば、ロボットをCGのキャラクタで上描きしてしまうことが可能である。ロボットが手を挙げるとキャラクタも合わせて動くようにすれば、常にロボットを隠し続けることができる。その一方で、目の前の映像に手を伸ばすと実体があることが感じられ、握手したりすることが可能である。
某社でこのようなシステムを複合現実ロボットと呼んで研究していたところ、社内の広報担当の目にとまってバーチャルヒューマノイドという名前でイベントに出すことができた。IT mediaの記事が海外に配信されたため、海外のブログでも少々話題なった。その中にあったのが、"Virtual Humanoid Project"とタイトルを付けている記事である。(プロジェクト?)正直、意表を突かれた。大きな会社なので、大人数で組織的に進めていると思われたのも無理はない。実際のところ専任担当者は私一人でプロジェクトと呼べるようなものではなかったのだが、この呼称は気に入ったので以来バーチャルヒューマノイドプロジェクトと名乗っている。
もともとは某社に入る前に思いついて一人でやっていたものである。着想したのは大学の助手になる寸前の2000年11月、ROBODEXでのある幻滅がきっかけである。
バーチャルヒューマノイドの開発(2)に続く